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文藝春秋
グループ:Book
ランキング:61959
価格:¥ 1,300
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発売日:2008-08-07
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カスタマーレビュー ![]()
脳心サイエンス=ゆらぎ
(2008-11-23)
本書は脳科学者である池谷先生が、現在行っている「多ニューロンのイメージングによる脳回路システムの理解」に関する研究を軸に、サイエンスに対する考え方、つまり池谷先生版"科学の方法"論を綴ったエッセイである。
随所に最新の脳研究の成果が"ミニ質問"という形式で分かりやすく、しかも池谷先生のその問題に対する視点も織り交ぜて紹介されているが、本書は脳科学のホットなテーマを紹介する!というものではなく、あくまで"現在"の池谷先生による"科学の方法"なのである。
先生が現在に至る研究生活の中で、脳をどのように理解していけばいいのか、またそもそも科学的な分かるとはどのようなことなのか、ということについてその問題に正面から立ち向かっている池谷先生ならではの視点が多く述べられている。詳しくは本書を読めばよいと思うが、キーワードは脳、心そしてサイエンスの"ゆらぎ"であろう。サイエンスによって物事を分かるとはどういうことなのか、そしてその方法で脳は理解できるのか、といったことに興味がある方は大変楽しめると思う。
そして、本書の魅力の一つは科学者池谷先生の科学研究に対する「本音」が聞けるところであろう。「科学者にはプレゼン能力が必須」「仮説を立てると視野が狭まる」「アイデアはコミュニケーションから生まれる」「やりすぎなければ研究は成功しない」「何が出来るかの方が大事」など科学に対する池谷先生の捉え方が知れる。このような問題は科学者を目指す上では誰でも直面するであろうというものであり、特にこれから科学を目指そうという学生の方(僕も学生だが)にかなりおすすめである。
現在進行形のゆらぐ池谷先生がこれから脳科学にどのように取り組んでいくか非常に楽しみになるのと同時に、同じように科学者として負けずに頑張って行きたいと思わせてくれる良書であった。
一期一会
(2008-10-15)
第一線で活躍する脳研究者・池谷裕二氏が語った人に自分の主張を伝えるプレゼンテーションの極意.
最新の脳研究や池谷氏の経験談を絡めた内容は,現代の研究者,政府の科学研究に対する姿勢に辛辣な警鐘を鳴らしている.特に,池谷氏の経験談は,将来の方向性を模索している中高生に良い刺激になると思う.
卓越した研究を行うためには,研究発表,論文執筆,研究費獲得などといった個人レベルの活動だけでなく,多数の異なる分野の専門家と連携する集団レベルの活動が大切である.このいずれのレベルにおいても,自分の主張を相手に伝えるというプレゼンテーション能力がキーファクターとなる.若手研究者にはぜひ読んでもらいたいところである.
また脳をわかるためには,還元主義的な分子生物学だけではなく,個々の要素が相互作用し合い,ボトムアップ的に脳システムが形成されているということを理解しなければならない.
一般的に科学研究では「再現性」ということが重視されるが,池谷氏は「一回性」の現象にこそ生命の本質があるという.人生でも何度も遭遇する事よりも,一回だけの出会い,つまり「一期一会」に大きな刺激を受けるということに通じ,非常に含蓄のある言葉だと思う.
脳についての本ではなく、サイエンスのあり方についての本です。
(2008-09-21)
脳についての本ではなく、その研究を通じて著者が得た、サイエンスに対するアプローチについて語っている本です。
これまでの常識的な考え方が覆され、軽い衝撃を受けました。
たとえば:
・因果律は人の妄想である。実験科学で証明できるのは因果ではなく相関のみ。
・仮説を立てない研究をする。
・分解しないで理解し、はじめてわかるものがある。
・脳研究ではブラックボックス理論は通用しない。つまり再現性がない。
等々です。
自分は職業上、会社組織の分析等を行うのですが、そのアプローチはこれまでのサイエンスのアプローチ−つまり「分ける」「因果関係を明確にする」−が中心でした。しかし、上記したような、この著者の考え方も当てはまるのではないか、そして、これまでのサイエンティフィックアプローチでは見えていない問題や事象も沢山あったのではないか、、、と考えさせられる部分が非常に多かったです。
これからの仕事に活かしていきたい内容の本でした。
科学者を目指す学生にお勧めの1冊
(2008-09-17)
固い決意で「必ず明日から○○を続けるぞ」と思っても、3日坊主で終わってしまうことがある。どうして脳や心は、楽な方向へゆらぐのだろうか?それは皆が興味を持つテーマなのではないだろうか。
本書「ゆらぐ脳」は「海馬」などの著書で知られる脳科学者池谷裕二さんが、最先端の脳科学研究を続けてきて思うことや、感じることなどを大変まじめに、かつ分かりやすくエッセイ風に仕上げた本です。
本書では、脳の性質を様々な実験エピソードから解説をしてくれる。この秋の夜中に読むには最適な1冊でしょう。また科学者を目指す学生には参考になるでしょう。ただ、タイトルから期待をしていた、脳のゆらぎについてのお話しは最後の章でまとめられているが割合が少なく残念に思った。読後の感想としては、タイトルは「脳に関するよもやま話し」が適当だと思えた。
ゆらぐ脳を読んで
(2008-09-11)
著者の本を読むのはこれで3冊目、ちょうど2年前に読んだ最初の『海馬』は糸井重里との対談であり、2冊目の『進化しすぎた脳』(両署とも「感銘の1冊」として紹介)は、中高生たちとの対話形式を採っているが、本著では木村俊介の質問に答えるというスタイルである。
いずれも対談の相手が「脳科学」の素人というところから、一般の読者にとっていたって身近で入りやすいのが特徴である。
この『海馬』によって、脳細胞は死滅するばかりだと聞いていたのに、記憶中枢である海馬だけは、使うほど増えるのだということを知って、大いに勇気づけられたものだ。
タイトルの「脳のゆらぎ」だが、脳の神経細胞が自主的に活動するときに、「ゆらぎ」に似たリズムが見られる。従来はそれを一種の「ノイズ(雑音)」として、脳の活動究明に有害なものだとして不当に扱われてきた。
それを著者は、脳全体で見ると脳部位の相互関係の中で、たえず揺り動いていることを(綿密なMRI検査で)見つけることで、そうしたゆらぎにも意味と理由があるものとして捉えている。
そこには、組織を分割して部分だけを見ることの危険性、たとえば、いま注目の「分子生物学」だが、彼らの細分化することで全てがわかるという発想の危うさを指摘している。
とはいえ著者は、脳の至妙な働きを霊的なものとして韜晦(とうかい)する事なく、あくまでも脳の活動は、脳神経の発する電気作用と、タンパク質・アミノ酸それにイオンの移動とフィードバックという、至極即物的な作用で生まれ、特定の神経細胞が放出する脳内物質、たとえばドーバミンとか、エル・アドレナリンなどの微妙な働きで「喜怒哀楽」が生まれ、その作用が表情にも反映されることだとする立場は崩さない。
たとえば霊的現象・超常現象として捉えられ勝ちの「幽体離脱」にしても、特殊な装置を使うことで、健康な人でも経験することが可能であることを教えてくれる。
そうした現象について著者は、この「第三者の目で、客観的の己を見る」という人間の「客観視力」は、生長にかがせない能力であって、決してきかいな現象とは思わないと強調する。
ただそうした「脳の至妙な働き」は、分解することで見付かるものではなく、いわば無駄も多く、間違いや過ち、それに錯覚などという、一種泥臭い行動原理の中で、
複雑に張り巡らされた脳の各部の絡み合いと揺らぎの中で生み出されるのだと言う。
もっとも興味深い事例だが、神経細胞は栄養を与えられるとシャーレの中で1年ほ
どは生きるので、それ自体「生命体」といえそうな感じであるが、培養は難しく分裂・増殖はしないし非常に脆い。
一方ガン細胞は非常に強くて、東京大学にあるものは50年以上生き続けていると言う。本著の中で、著者が博士課程の学生時代に行なった興味深い実験紹介している。
ネズミの脳組織をミンチしてタンパク分解酵素トリプシンをかけて保温器に数十分すると神経細胞はバラバラになって沈殿する。それを濾過して酵素を洗浄する。
その時点では単に「丸い細胞」に過ぎないが、それをシャーレに入れて栄養を与え、24時間後にわざと栄養を少なくして飢餓状態にする(かわいい子には旅をさせる)と、周囲の細胞と結びついて生きようとして、次第に神経細胞のネットワークを形成させ、しかも常にダイナミックに内部の結束を強めて、回路のつなぎ替えやシナプスを作っていく。
と言うのだ。ご存じのように海馬以外の脳細胞は、一定の時期から死滅して減少すると言われている。そうした中でこうした、ある意味タフな「生命現象」を知れば知るほど、脳の持つ可能性に驚嘆するばかりである。
科学に常識と思われる「仮説」という手段を採らないという著者は、「なにをやりたいか」より、「何を試すことができるか」が大切だという。そして「科学的な論理を詰める」よりも、好奇心を先に走らせることを採るのだという。
どうも著者は、脳の至妙な働きよりも、むしろ脳細胞の「ガックリするほどヘタクソな使用法」に、いい知れないほど愛着を持っているようだ。
また日本とアメリカのの学者の違いは、その表現能力の差であって、アメリカの著名大学で教わったことは、いかにうまく表現するかという、プレゼンテーション能力の養成だったと述懐する。
そうした問題提起も含めて、複雑で捉えどころのない脳の働きについて、このように親切な入門書の存在と、著者の能力・サービス精神に感謝したい。
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